エソラことだま。 -臆病風のブログ-

どうせMr.childrenを書いてしまうんだ

Mr.children25周年感謝祭「Thanksgiving25」とは何だったのか?②【セトリ全曲レビュー後編】

 

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16.ランニングハイ
『沖縄』『足音』でしっとりとした空気が一転、会場全体が一気に明るくなり、歌詞に沿った映像が巨大スクリーンで流れる。僕が大好きな歌詞「亡霊が出るというお屋敷をキャタピラが踏み潰す」シーンもしっかりあった。

幻想にすがり、ただただイキがってた若いころの無鉄砲さはどこかに置いてきた。いまは凡庸な毎日ながらも前を向いて生きる男。僕らサラリーマンのある種の理想形が『ランニングハイ』には込められている。リーマンの悲哀を全肯定し、玉虫色でもイイじゃん!と叫ぶこの曲に救われた会場の男たちは皆、僕と同じように涙したことだろう。

 

17.ニシエヒガシエ
3Dメガネをかけたような赤と緑の光に照らされて、ハイだかローだかわからない不思議な気分になる。また途中から手拍子も合わなくなったり、歌詞を忘れてしまったり、聴くとなんらかの作用が生じてしまうのだろうか。誰か僕にも抗鬱剤をちょうだい!
《この指止まれ〜》の絶叫に合わせ、オーデエンスが一斉に人差し指を上げるお馴染みのパフォーマンス。これに合わせて「みんなで手を上げたら誰がその指に止まるんじゃい!」とひとりツッコミを入れるのも僕のお馴染みのパフォーマンスである。


18.ポケットカスタネット
この日いちばんのサプライズ選曲。イントロが流れた瞬間僕は思わず「えっ!」と声を上げてしまった。
前2曲でグッと盛り上がった空気が再び静まり返る。その落差からか、僕は最初桜井さんがどこで歌っているのか見失ってしまった。しかしこのセトリは演者も客もまったく息を抜くことができないな。
僕はこの曲を聴くと2007年のHOMEツアー(スタジアム)を思い出す。まだ若くて素直じゃなかった僕の心をすっと溶かしてくれたこの曲を、10年ぶりに生で聴けたのは本当に嬉しかった。

19.himawari
「今一番聞いてほしい曲、コテンパンにします!」という挑発的なMCに心は撃ち抜かれ、力強い桜井ダンスにまた撃ち抜かれ、そして曲の力に三度撃ち抜かれた。本当に心に響く曲だ。
ヤフオクDで披露された時『himawari 』はまだ発売前で、オーデエンスは一歩引いて聴いていたように思う。既発曲とはちょっと違う扱いだったのだろう。しかし既に発売され、しっかり聴き込んでから改めて生で聴いた『himawari 』は他の名曲たちと変わらない、いやそれら以上にMr.Childrenの一曲としてライブに溶け込んでいた。
僕にとってMr.children、君たちのいない世界ってどんな色をしてたろう?聴きながら僕はそう考えずにはいられなかった。


20.掌
All for one〜のコーラスから曲がスタート。イントロと同時にオーディエンスが夜空に手のひらを上げる。
歌詞に沿った映像がスクリーンに流れる。今回このケースが多いのは、ライトなファンでも楽しめるようにという感謝祭ならではの計らいかもしれない。
となれば今回はもはやレアとなった『掌』原曲ver.が聴けるかも?と淡い期待を抱いたがそうは問屋が卸さない。SUNNYさんとの掛け合いはすごく美しくて好きだかいいのだけれど。考えてみれば原曲をライブで披露したことは一度もない(たぶん)ので、もはやメンバーにとっては今のver.が原曲なのだろう。そもそもこの曲のメッセージは「認め合えればそれで素晴らしい」なのだから、ライブver.で曲は完結してるとも言える。

 

21.Printing
22.Dance Dance Dance
ライブもいよいよクライマックスに。
トゥルルル♪というお馴染みのイントロのリフが流れた瞬間から、僕は大いなる決意を胸に刻んだ。イントロのドン!というところでおそらく3度目の紙テープ投入があるだろう。しかもクライマックスに相応わしく大量に投入されるはずだ。過去2度までもゲットに失敗している僕にすれば、最後のチャンスを逃すわけにはいかない!僕は仕事では一切見せない集中力で曲に臨んだ。
そして「トゥルルル ドン!」の音とともに僕は上を見上げた。その時空には大量の紙テープが舞い上が、、、、ってない…音とともに舞い上がったのは綺麗な花火(紙吹雪だったかな?忘れた、ゴメン!)だった。
僕は虚しさを堪えながら、エア紙テープを掴もうとジャンプした。どんどん涼しくなる優しい風が、僕に向けて吹きすさいできた。

 

23.fanfare
《悔やんだって後の祭り》って、紙テープを取れなかった僕に言ってるの?なんとも計算され尽くしたセトリだこと。
それはさておき、この曲で会場のボルテージは間違いなく最高潮に達した。『fanfare』って音源ではなぜか聴く機会が少ない曲だったので、ここまで盛り上がるとは驚いた。
《やがて袋の鼠〜》からオーデエンスが歌うよう、桜井さんから促される。しかし興奮で歌詞がよく思い出せない僕は仕方なく大声ハミングバードと化した。イヤ、最後の《帆を張れ〜!》はしっかりと歌ったよ。

 

24.エソラ
桜井さんの「最後の曲!」というコールとともにおなじみのキラキライントロが流れ、会場は楽しいんだか残念なんだかわからないけど、とにかくすごい雰囲気になる。
やがて音楽は鳴りやむのはわかっていたが、それでも僕らは今を踊り続ける。まだ終わってほしくない、永遠に続いてほしい。そんな無茶で我儘だけど、正直な思いを込めて。
ライブが始まってからずっと仁王立ちだった前の席の男性が大きくを振っている。その隣の若い女性は泣いている。僕の右隣の女性は大声で歌っている。それぞれがライブの終わりに対して必死で抗っているようだった。
《Rock me Baby tonight》「今夜は俺を揺さぶってくれ!」という意味のフレーズが3万数千の声に乗って熊本の夜空に大きく響き渡り、ライブ本編は終了した。

 

25.Overture
26.蘇生
アンコールは『Overture』のイントロからスタート。曲とともに再びメンバーが会場に入ると、今日は少なくとも25回目以上となる大きな拍手が湧く。
『蘇生』だ!

『蘇生』は熊本市の大西市長がライブ当日、twitterで「今朝聴いた」と上げていた曲だ。大きな地震を経験した熊本のファンにとって、一際特別な曲の一つに違いない。
しかし人は何度でもやり直せる。そんなテーマの曲をアンコール一発目に持ってくるなんて罪作りな人たちだ。だって何度でも、いつまでも、永遠にこの夜が続いてくれると錯覚してしまうじゃないか。

 

27.終わりなき旅
『蘇生』が終わり、ブルーフラワーを持った桜井さんがスクリーンに映る。
会場全体からの大きな拍手に笑顔になるメンバー。異変はここで起きた。オーディエンスの拍手がいつまでたっても止まらないのだ。桜井さんがMCを始めようとしても拍手が止まらない。いや、止められないのだ。

これはおさまらないミスチルへの最大級の感謝の気持ち。そして寂しさと怖さからだ。
この拍手を止めた瞬間から、ライブの終わりが始ってしまう。この受け入れがたい現実に会場全体が恐れている。終わって欲しくない!そんな想いから誰も拍手を止めることができない。
しかし残酷すぎる時間のなかで、終わりは受け入れなければならない。桜井さんは拍手を優しく制するように最後のMCを始めた。
「ここまでは過去の曲をやってきたけど、最後の最後のこの曲だけは未来を歌います」
ステージの照明が消え、『終わりなき旅』。僕はこのライブ最後の曲を心に刻みつける思いで聴いた。

曲について述べることは、もはや何もない。
中川敬輔は興奮して手を挙げていた。鈴木英哉の汗は会場に届きそうなほどに飛び散っていた。田原健一は披露宴の新郎のような上下白一色の衣装でギターを弾く。そして桜井和寿は歌う、いや叫ぶ。
長いアウトロ。4人は会場を向かず、円を描くように向かい合って演奏する。「いいから最後は俺たちの演奏だけを聴いてろよ」僕はメンバーからそんな風に言われているように感じた。そして、ライブは終わった。

 

まとめ・「Thanksgiving25」とは何だったのか?
25周年という節目で演奏された27曲の殆どがシングル曲という特異すぎるセットリスト。僕のようなコアなファンはもちろん、「ミスチル?まあ好き」というライトなファンの方々も大いに楽しめたと思う。まるでスシローで次から次へと「濃厚ウニ包み」が回ってくるようなプレミアム感満載の贅沢さだった。

ライブ中、僕は曲を聴きながら発表当時の記憶を蘇らせていたが、これがまた鮮明に思い出せてしまうのだ。大学生だったイノワーの頃の情けない自分。熊本に住み始めたころによく聴いた『ニシエヒガシエ』。妻との出会いの証みたいな『365日』。そして熊本地震に遭遇した僕の心を支えてくれた『ヒカリノアトリエ』。あの曲の頃はあぁだった、この曲の頃はこうだった、と人生を振り返る3時間ミスチルの旅。

 僕の人生は本っ当にミスチルとともにあったんだ。改めてそう気づかせてくれたMr.Childrenとサポートメンバーそして全ての関係者の方々に心からお礼を言いたい。
そう、つまり「Thanksgiving25」ツアー=25周年感謝祭とは、ミスチルからファンへの感謝を伝える旅であると同時に、僕らファンからミスチルへの感謝を告げる時間でもあったのだ。数万人規模のドームやスタジアムで行われたこのツアーの動員はおそらくすごい数だろう。でもメンバーとファンが「感謝」というワードをしっかり共有しあえた今ツアーでミスチルと僕らの距離はすごく近く感じた。皆はどうだった?

 

しかし驚きなのはドームと、スタジアムで数曲セトリを変更しながら、どちらでも演奏されなかった名曲がまだまだあることだ(『しるし』『NOT FOUND』『光の射す方へ』『HERO』…キリがないからこの辺りでやめとこう)。それらは、桜井さんが「数年後必ずやる」と宣言してくれた次のツアーで聴けることを楽しみにに待つことにする。

 

そういえば本場アメリカの「感謝祭」といえば七面鳥を食べる日じゃないか。家に帰ったら食べちゃおうかな。
いやいや、さすがに今から七面鳥はハードルが高いな。

やっぱり「から揚げ棒」でいいや。