SINGLES ~Mr.Children『重力と呼吸』全曲レビュー③~
『重力と呼吸』3曲目のレビューは『SINGLES』!
『SINGLES』は9月まで放送していたTVドラマの主題歌だったが、
臆病風(管理人)は1度もそのドラマを観ていない。
それどころか番宣CMが流れようものなら、あわててTVの音を消すほど徹底して避けていた。
臆病風は個人的にミスチルの歌を最初にTVで、しかもドラマ主題歌という妙録vor.で聴いてしまうのが許せない。やっぱり初聴はじっくり最初から最後まで噛みしめるように聴きたいから。
てなわけでアルバム発売により晴れて聴くことが出来た『SINGLES』の歌詞解釈、スタート!
君は嬉しそうに しばらく空を見ていた
東京タワーの向こうに
虹が架かって
で、そのあと僕の頬にキスした
歌は都会で暮らすカップルのおしゃれなワンシーンからはじまる。
視線の先には東京タワーの奥にかかる虹という、いかにもロマンチックなシチュエーションに彼女は盛り上がってしまったのか、思わず僕のほっぺにキスをした。
昼間っからなかなか大胆な女性である。しかしこれ、男としては最高のご褒美だろう。
僕は意外と いろんなことを覚えてて
戻れないこと よくわかってたって
何処かに面影を探してしまう
東京タワーでのキスは僕の回想だった。彼女とはおそらく別れたばかりだろう。
こういう印象的なシーン以外にも、僕は君との思い出をたくさん覚えているという。
「面影を探す」=「僕の記憶の中から君の姿を見つける」=「君を思い出す」。
もう恋人には戻れないのはわかっているけど、頭に多く残る思い出の記憶の中で君を見つけてしまうんだ。
自分に聴かせるだけの口笛は
少しだけ寂しくて胸締め付けるメロディ
ひとりで歩きながら口笛を吹く僕。
前は君が横にいて聴いてくれていたけど、いまはひとり(SINGLES)。
僕はその口笛の音色の寂しさに胸が締め付けられているんだ。
悲しいのは今だけ
何度もそう言い聞かせ
いつもと同じ感じの
日常を過ごしている
それぞれが思う幸せ
僕が僕であるため
oh I have to go
oh I have to go
人は大切な人を失うと、自分の身体の半分が消えてしまったような喪失感に苛まれる。僕もその感情から何とか逃がれようと「悲しいのは今だけだから」と自分に言い聞かせ、いつも通りの日常を過ごす日々。
自分が自分でなくなってしまわないよう、新しい幸せを追い求めよう。
いつまでも彼女のと想い出に留まっていてはいけない。
そう言い聞かせて生きている。
どんな音楽も
痛快と話題の映画も
君の笑顔には敵わないってわかった
ねぇ君はまだあの虹を覚えてる?
僕は彼女を失ってからひとりでたくさんの音楽を聴き、痛快だと話題の映画も観たけど、君が見せた笑顔より好きなものはない。
あの日見た東京タワーに架かる虹、君はまだ覚えているかい?
誰かの為に生きるって誇りを
僕に教えてくれたのは
君だけと言い切っていい
「君のために生きたい」
そう思えたのは君だけだよ…
守るべきものの数だけ
人は弱くなるんなら
今の僕はあの日より
きっと強くなったろう
それぞれが思う幸せ
君が君であるため
oh you’ll have to go
「守るべきものの数だけ人は弱くなれる」
そんな言葉があるのなら、君を失った僕はきっと強くなったのだろう。
君も自分が思う幸せを追い求めてほしい。
でないと君じゃなくなってしまうから。
誰もが胸の中で
寂しさっていう名の歌を歌ってる
少し もの悲しくて
人恋しくなるメロディ
「ひとりは寂しい」と口笛が僕の胸に響く。
そうこれこそが『SINGLES』のテーマだ。
ミスチルはかつて『口笛』という曲を世に出したが、その曲で歌われていた口笛は温かく笑顔に満ちた音色だった。一転『SINGLES』で歌われる口笛は孤独で、冷たくて、寂しい。同じ言葉でも曲によって全く印象を変える桜井歌詞の真骨頂をここに見た。
楽しいのは今だけ
自分にそう言い聞かせ
少し冷めた感じで
生きる知恵もついたよ
それぞれが思う幸せ
僕が僕であるため
oh I have to go
oh I have to go
oh you’ll have to go
oh we’ll have to go
胸を締め付けられるような寂しさを乗り越えようと、僕は歩きだす。
君との時間は常に楽しかったから、失った時の悲しみが大き過ぎた。
だからもう、これからは一歩引いて生きることにしたんだ。
「楽しいのは今だっけ」ってちょっと冷めた感じでね。
それが今考える僕らしい幸せなんだ。
それでいい。
僕も、君も、前へ進まなきゃいけないから。
途中から歌詞解釈というより歌詞”翻訳”となってしまった『SINGLES』。
二人がどんな理由で離れてしまったはわからないが、幸せだった時間が頭に思い描け、切なさを増す。
最後も「男に弱さ」「つよがり」をあくまで等身大の表現で示した、桜井和寿らしい歌詞だった。