エソラことだま。 -臆病風のブログ-

どうせMr.childrenを書いてしまうんだ

【セトリ全曲レビュー前編】Mr.Chiidren Tour 2018-19 重力と呼吸 別府公演で残したモノ①※ネタバレ注意

9年前の別府は、雨だった。

「僕たち『別府チェリーボーイ』です」と桜井さんがMCで語ってからもうそんなに経つのかと改めて驚く。
思えばあの時はビーコン周辺にダフ屋のおっさんが大量に待ち構えていて、「チケット◯万円で売ってくれんかね」とか「チケットあるよ、2枚で◯万円」とか何度も声をかけられた。法外な価格で買っている人を目の当たりにした。そりゃ、今も昔もミスチルライブはプラチナチケット、金さえ積めば諦めかけていたその日のライブに行けるというなら、いくら高くても払う人は払うだろう。しかし現在なら売る方も買う方も一発でお縄に違いない。嗚呼、古き良き(良くはないか)平成のコンサート事情よ。

そんな2009年3月以来、Mr.Children2度目の別府ビーコンプラザでのライブの日だ。

 

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公演2日め、2018年11月24日はまさに秋晴れのライブ日和で、会場奥の山には遊園地「ラクテンチ」の観覧車が見える。

温泉街であり、観光地のイメージが強い別府。ライブ会場であるビーコンプラザのほど近くには水族館「うみたまご」や「高崎山自然動物園(いやゆるサル山)などの行楽地も多い。
そんな別府でのミスチルライブ。2009年3月の「終末のコンフィデンスソングス」ツアー以来の開催に町は大騒ぎになっていた。

地元ニュースでは「あのミスチルが別府に!」と大きく報道され、近隣のホテルは予約困難、別府駅の土産物屋は「売上UPにキタイ♪」と発注を大幅に増やしたそうだ。来るだけで地域経済に ムーブメントを起こすMr.Children、ビッグだぜ。

 

ところで臆病風(管理人)はこの春から大分で生活をしている。長く住んだ熊本から転勤で引っ越してきた。
ミスチルは昨年(2017年)熊本でサンクスギビングツアーファイナル、今年は大分でライブと2年連続で僕の地元でのライブを開いてくれた。
こんな幸運は滅多にない。いや幸運というより、もはやミスチルが僕を追ってくれているに違いない。

そんな脳が湧いたような妄想はさておき、9年ぶりの別府公演でミスチルの4人が残してくれたモノは何だったのか、全曲レビューとともに検証したい。

 

ここから先は完全ネタバレになるので閲覧にはご注意を。

 

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会場外はのどかな雰囲気。スタジアムやドーム公演のようにグッズ購入の大行列もなく、何もかもがスムーズに進む。

 

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ツアートラック。これだけメンバーを前面に出したデザインは珍しい。
しかしもし自分がメンバーとして、こんなトラックが走っていたら相当恥ずかしいだろうな。

 

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指定席券だったが、今回は本人確認にあるので入場のために並ぶ。
1000人以上が並んだため最後尾は完全に公道に出ていたが、完全なる道交法違反では?

 

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入り口。行列はスムーズに進み、15分程度で中に入れた。

館中では本人確認が2度も行われて、身元をしっかり確認された。誤魔化そうったってそうはいかないらしい。


会場内に入ると、薄暗い空間にブルーとパープルの光が漂っている。まるで『here comes my love』の世界の中に入り込み、大きな海原を泳いでいるようだ。

アリーナの中央部には奥のステージからせり出すように花道がある。ビーコンプラザはキャパが狭いので、花道はかなり長く伸びているように感じた。これなら相当後方の客でもメンバーを近くに見られるな。

 

実は開演の数分前にちょっとした事件が起きた。僕の数席前、アリーナ15列目あたりでスタッフに連れられて入場したカップルが座るべき席に、すでに別のカップルが座っていた。

スタッフは両者に席の確認を促すが、どちらもここが自分の席だと譲らない。そこでスタッフ自らがチケット(今回は電子チケット)を目視で確認しようとしたが、座っているカップルは「ここで間違いないから」とチケットを見せようとしない。何度お願いされても応じないのだ。この時点でかなり怪しいのだが、もし何かの手違いで同じ席番号のチケットが両者に渡されていたらと僕は想像してしまう。先着順ってワケにはいかないだろうし、じゃんけんでもするのだろうか…

すったもんだの末、やっとスタッフの求めに応じて座っているカップルも渋々チケットを確認。なんと彼らの席はアリーナではなくスタンドだったようだ。二人はかなり不満げに席を去ったが、そんな絵に描いたような逆ギレも珍しい。

ただ残念だったのは、代わって座ったカップルの男性が身長2m近くの大男だったことだ。僕の視界はギリギリ遮られずに済んだが、彼の真後ろの女性にとっては前にいきなり壁ができたようなもので、「前のほうがよかったのに!」と矛先が見えない怒りに震えたことだろう。

 

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【セットリスト】

1.SINGLES
2.Monster
3.himawari
4.幻聴
5.HANABI
6.NOT FOUND
7.忘れ得ぬ人
8.花-Memento mori-
9.addiction
10.Dance Dance Dance
11.ハル
12.and I love you
13.しるし
14.海にて、心は裸になりたがる
15.擬態
16.Worlds end
17.皮膚呼吸

ex1.here comes my love
ex2.風と星とメビウスの輪
ex3.秋がくれた切符
ex4.Your song

 

1.SINGLES
ニューアルバム『重力と呼吸』のリード曲からライブはスタート。
黒のジャケット、黒のパンツに真紅のTシャツという、かつてのビジュアル系バンドのようなビビットな衣装の桜井さんは出だしからノリノリ、1番サビではマイクスタンドを投げつける永ちゃんばりのパフォーマンスを見せた。

会場にいる人たちも皆、それぞれの生活の中で何かしら問題を抱えていることだろう。それが何であろうと誰であろうと、人は今日を生きなければならない。
「we have to go」と桜井さんは、僕らを「さあ、生きよう!」と奮い立たせてくれているように歌っていた。

桜井さんは終始踊りながら歌い、オーディエンスのボルテージはあっという間にMAX、会場は一体となった。
『SINGLES』は自分の口笛すら聞かせる相手のいない男の孤独を歌った曲だが、いま、この会場の中で孤独を感じている人は一人としていないだろう。

 

2.Monster
2005年リリースの『I❤︎U』収録曲。桜井さんは終始艶かしい声で歌い、セクシーに踊り、サビでは「knock knock!」とオーディエンスをさらに煽る。「さあ、叫び声をあげよう」と。
僕も横の席の女性から何度もアッパーを食らわされそうになりながら(僕は身長181㎝、平均身長の女性がコブシを振り上げたあたりにちょうど顎が位置する)、遠慮がちにコブシを挙げて応戦した。

僕は幸運にも今回花見にほど近い席で、桜井さんが花道に来ると手が届きそうな程近買った。ただ僕の周りの席の人たちも同様にそうなので、桜井さんがコッチに近づくたびに周辺はザワつき、カオスと化す。
通路を挟んで僕の後方の席の全身ツアーグッズで決めた女性はいつのまにか僕のほぼ真横までせせり出て来て「カズトシ〜い!」と何度も叫ぶ自由っぷり。い、いやココはスタンディングじゃないんだけど…(苦笑)。


3.himawari
「3曲めでいきなりhimawariかよ!」イントロが流れた瞬間、僕は心の中でそう叫んだ。アルバムの主役とも言えるこの曲をこんなに早く持ってくるなんて、マジで挑戦的なライブだ。『重力と呼吸』というアルバム自体が挑戦的な作品であるし、このツアーも相当僕らを驚かせようと仕掛けてくるな。

逆境や恵まれない境遇にも負けずに生きた愛する人の強さを、暗闇に咲くひまわりに例えたこの曲を聴くと、熊本地震(当時僕は熊本に住んでいた)の被害から立ち上がろうと皆で奮闘していた頃を思い出す。家を失くした人、職場を失った人、水や食料の配給に並ぶ人などそれぞれが絶望とも言える環境の中で、多くの人が明るく笑顔で生きているその姿は、僕にとってまさに「暗闇に咲いてるひまわり」だった。
邪にただ生きているだけの僕だけど、その地を離れても決して忘れることのないその思いに胸が熱くなる。

 

4.幻聴

桜井さんの「まだまだ行くぞ大分!」の声に合わせてイントロが流れる。
『幻聴』は明るくて前向きでそれでいて幻想的な、ライブにピッタリな曲だ。よく「音楽に励まされる」とか「歌に勇気づけられた」などと言うけれど、それは流れる音の中から聴く側が「頑張れ!」「大丈夫だよ」とかいう幻聴を聴き取っているんだと思う。つまりその幻聴こそが音楽に込められたメッセージなのだろう。僕はメッセージを存分に受け止めながら『幻聴』に聴き入った。

 

ここで桜井さんのMC(記憶に基づいて書いているため正確ではない。そのエッセンスだけ受け止めてほいい)。

「この会場(別府ビーコンプラザ)で演るのは久しぶりなんだけど、その時来た人!」と挙手を煽ると結構な人が手を挙げていた。

「はじめて来た人!」何を指してはじめてなのかが不明だったが、これにも結構な数の挙手あり驚いた。ま、なんでも良いのだろう。

「先週は埼玉で演った時は16,000人、で今日は4,500人!まるでライブハウスだ!」に大歓声があがる。

「今までとは違うMr.Childrenをお見せします」
「何度も来てくれる人、はじめてMr.Childrenのライブに来てくれた人、この会場の全ての人にこの曲を送ります」と言ってた始まった曲は…


5.HANABI

上のMCに続くお馴染みのイントロに4500人分のため息が会場を埋め尽くす。いまやミスチルのスタンダードナンバーとなった『HANABI 』だ。
ヴォーカリストとしてレベルアップのためヴォイストレーニングを強化しているという桜井さん。今回もキーを下げず原曲のまま歌い上げた。

余談だが、僕のHNである「臆病風」はこの曲から頂いたものである。
「臆病風に吹かれて波風がたった世界に立っているのは、まさしく僕だ…」一年前の熊本公演でこの『HANABI』を聴きながら突然そんな妄想を抱いてしまい、自分の人生とMr.Childrenとのクロスロード、繋がりを解き明かすべく始めたのでがこのブログである。

 

 


6.NOT FOUND

まずはジェンのドラムソロ。「これがMr.Childrenの心臓部(だったかな?この辺は記憶があいまい)です!鈴木英哉!」と桜井さんが煽る。
歌い出したときには何て曲だったが思い出せないくらい久しぶりに聴いた『NOT FOUND』。『HANABI』の後でこの曲も原曲キーで歌い上げるなんて神業じゃね?日々努力を怠らないのだろう。しかし桜井さんにしろ他のメンバーにしろ、もう何もしなくても生活に困らない程の成功を収めてるのに、いまだ努力を続けられるモチベーションはどこから来るのだろうか?

僕にはそんなモチベーションはNOT FOUNDなのに。


7.忘れ得ぬ人

「こんな恋愛してみたいミスチルソング」堂々第1位の『忘れ得ぬ人』がここで登場。
死別をも想像させる別れを経てなお、忘れられない最愛の人。新しい恋に目覚めようとしても必ず彼女を思い出してしまう。もう死ぬまで彼女を思っていたい…
こんな切なすぎるストーリーの曲を最高に艶っぽい声で歌われた日にゃたまらんぜよ。歌い終わった瞬間、4500人は曲の余韻に静まり返ってしまった。

「大丈夫ですが、シーンとしてますけど… ちゃんと聴いてくれてますか?」と心配になった(笑)桜井さんのMCに会場はドッと沸く。

ここでサポートメンバーの紹介。
「キーボード、SUNNY!!」
「コーラスもしてくれてます、コーラス、SUNNY!!」
「今回はギターも弾いてくれています、実は1曲目はギターでした!ギター、SUNNY!」
と3度続けてSUNNYさんを紹介するというまさかの天丼ネタを披露する桜井さん、MCが上手になったね!
続いて桜井さんはもう一人のサポートメンバー、今回新たに加わったキーボード・世武裕子に近づく。
「今回新たな才能に出会いました!キーボード、世武裕子!セビーって呼んでます!セビー!」
「サニーと、セビー!サニーと、セビー!サニーとセビー!」2人を交互に何度も指差して遊んでいる桜井さん、MCがノリノリになったね!

 

 

そうこうしている間に花道にドラムが設置され、花道先端部ではスタッフがギターを持ってスタンバイ。お、そろそろメンバーが花道に移動か?とわくわくして花道先端に目をやると、そこになにやら幕が下りていた。何だろう…
メンバーが花道に近づき、いつもと違うフォーメーションを取る。花道に沿って一人ずつ交互に横を向き楽器を構える。

その時僕は見た!スタッフが持っているギターをもらう直前、桜井さんがズボンのベルトを締め直すのを!はじめて垣間見たスーパースターの素の仕草に僕はこのライブで1、2を争うほど興奮した。

 

以下MCを妙録。

「次の曲はこんな感じでやらせていただきます」

「次の曲は1996年に発表した曲」
「当時は小説家みたいにホテルに缶詰めになって曲を作っていた」
「1か月頑張ったので最後の日はご褒美に自由に過ごそうと決めていた。何をしたかはココでは話しません」
「その日の朝、草野球の試合で外野を守っていて、芝生の中から花が開こうとしていたのが見えた。次の曲はその時に下りてきた曲です」

8.花-Memento mori-
僕の人生を何度も何度も支えてくれた『花-Memento mori-』を僕の目の前で…
「ふと自分に迷うときは風を集めて空に放つよ」この歌詞を聴いて以来、僕は悩んだときは深海に潜るくらい大きく深呼吸をする。そうすればアタマもココロも軽くなり、少し楽になれることを知ったからだ。それで何かが解決するわけじゃないけど、重荷が外れる気がするのはすごくいい。

 

例えるなら、夜中の商店街で歌うストリートミュージシャンと酔客くらいの隔たり。ピッキングの音も聞こえるくらいの距離で歌ってくれた『花』は間違いなく僕の生涯の想い出のひとつになった。

9.addiction
久しぶりに『重力と呼吸』からの選曲。アップテンポで力強い曲だ。桜井さんは雑誌で「ライブで歌うことを意識して作った曲もある」と語っていたが、おそらくこの曲のことだろう。
「addiction」とは「中毒」「依存症」と訳される。何かに依存し、それを断つことができない人間の苦悩の叫びを表現した曲だ。でも考えてみればこれは僕たちオーディエンスのことでもある。なんたって僕ら、ミスチルを断つことなんてできやしないミスチル中毒患者=チル中の集団なのだから。
ノリノリな曲だけに、花道周辺の席は再びカオス状態となる。さっき『Monster』のとき僕の横まで来ていた全身ツアーグッズの女性、今度は僕斜め前にまで移動しようとしていたが、さすがに係員に止められていた。

10.Dance Dance Dance
『addiction』でボルテージがググっと高まり、会場はまた温度が上がる
いつの間にか田原さんが花道先端に移動し、「チャラララ♪」とライブでは聴き慣れたあのイントロを弾く。『Dance Dance Dance』だ!
これぞミスチルライブの新しい姿。田原さんのギターソロはめちゃめちゃカッコイイ。しかし田原さんは痩せてるなぁ。

1番の演奏が終わり、花道先端でのパフォーマンスは中川さんにチェンジ。若干恥ずかしそうに見えたが、中川さんのソロパフォーマンスもめちゃめちゃカッコよかった。しかし中川さんの顔は義理の弟にそっくりだなぁ。

桜井さんもテンションが下がらない。「今夜も一人 lonly play」の歌詞の時、自らのナニをナニする仕草まで披露し、女性客の悲鳴を誘っていた。なんてエロ…
決して満たされることのない現代を徹底的に揶揄したこの曲で会場中が熱気で満たされる。そんなパラドックスな空間に僕はただただ酔いしれていた。

(後編に続く)

箱庭 ~ Mr.Children『重力と呼吸』全曲レビュー⑤~

いきなりこんなこと書くのもなんだが、
臆病風(管理人)は歌詞解釈のブログなんて一体なんのために書いているのだろう。

誰に望まれるわけでもなく、誰に読まれるわけでもなく解き続ける、答え合わせのない国語のクイズ、いやひとり禅問答。
もちろん一銭にもなりゃない。
仕事の合間や睡眠時間を削って同じ曲を一日に何度も何度も聴きながら、「俺は何をやってんだろう…」って夜中にシャワーを浴びながらシャウトする。
ま、楽しいからいいんだけれど…

というわけで『重力と呼吸』歌詞解釈も中盤戦。
5曲目の『箱庭』は3分14秒の短い曲だ。

 

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ヒリヒリと流れる 傷口から染み出る
赤い血の色の悲しみが 胸にこぼれる

奇しくも ワタクシ先日ランニング中に躓いて転倒し膝をすりむいてしまった。
傷口からは赤い血の色の痛みが染み出て、ヒリヒリと流れ出た。
…という話ではなく、歌詞解釈だった。
曲は失恋を連想させるフレーズから始まる。
悲しみで胸が張り裂けそうな思いを、傷口から流れる血に例えている。

ジリジリ寂しさは 現実味帯びてくる
気づかぬふりはできない でも認めたくもない 

別れを告げられたときは、その現実を受け入れられずにいたが、
日に日に増す寂しさに、いつまでも気づいていない振りはできない。
でも、認めたくない…

 

きっと僕が考えていた以上に
小さな箱庭で僕は生きてる

ここでタイトルの『箱庭』登場。
箱庭とは小さな作り物の庭のことだが、この曲でいう箱庭とは何を指すのだろう。
きっと前のフレーズで表現されていた僕の心情、「別れた悲しみをなかなか受け入れられない、彼女に翻弄され続ける世界」のことを「箱庭」と歌っているのだ。
 もっと端的に「箱庭=君」と言い切ってもいいのかもしれない。

誰のための愛じゃなく
誰のための恋じゃなく
不器用なまでに僕はただ 君を大好きでした

 ”誰のための愛じゃなく~”は彼女への想いは「君のために」なんてカッコイイものではなく、ただ僕が一方的に向けていたエゴだっだという告白。
サビのラスト、どうして「『大』好きでした」と大の字をつけたのだろう。あえてダサい線を狙ったのか?

明日には明日の風が吹くっていうけど
今日の太陽を浴びたい 月に見惚れたい

 明日は明日の風が吹く=過ぎたことはくよくよするな!
今の僕は過ぎたことにこだわっていたいんだ。つまり君を思っていたいんだ。

 

いつのまに過ぎ去っていた誕生日
祝ってくれる人がもういないことを知る

そんな風に考えていて過ごしていたら、いつの間に僕の誕生日は過ぎていた。
祝ってくれる君がいないから、それすら気づかないじゃないか。

僕が君という箱庭からいつまでたっても出られないことを語るエピソードだ。

 

誰のための愛じゃなく
誰のための恋じゃなく
乱暴なまでに僕はまだ 君を好きで
残酷なまでに温かな思い出に生きてる
箱庭に生きてる

彼女への想いは”乱暴なまでに”まだ強く、
その思い出は”残酷なまでに”温かい。
そんなことを思い続けている僕は
まだ「君」という箱庭の中で生きてるんだなあ…

〈エソラことば〉
等身大の男の弱さと未練がましさを歌った『箱庭』。
リアル男性の臆病風が言うのも何だが、男って本当にこの曲のような弱い奴ばかりだと思う。
フラれてすぐ気持ち切り替えられる男なんてほとんどいないから。
この曲みたいに無意識に心の中に箱庭をつくり、そこに依拠することで悲しみを軽減させて生きている。
それが男ってもんだ。

SINGLES  ~Mr.Children『重力と呼吸』全曲レビュー③~

『重力と呼吸』3曲目のレビューは『SINGLES』!

 

www.youtube.com

 

『SINGLES』は9月まで放送していたTVドラマの主題歌だったが、
臆病風(管理人)は1度もそのドラマを観ていない。
それどころか番宣CMが流れようものなら、あわててTVの音を消すほど徹底して避けていた。
臆病風は個人的にミスチルの歌を最初にTVで、しかもドラマ主題歌という妙録vor.で聴いてしまうのが許せない。やっぱり初聴はじっくり最初から最後まで噛みしめるように聴きたいから。
てなわけでアルバム発売により晴れて聴くことが出来た『SINGLES』の歌詞解釈、スタート!

 

君は嬉しそうに しばらく空を見ていた
東京タワーの向こうに
虹が架かって
で、そのあと僕の頬にキスした

歌は都会で暮らすカップルのおしゃれなワンシーンからはじまる。
視線の先には東京タワーの奥にかかる虹という、いかにもロマンチックなシチュエーションに彼女は盛り上がってしまったのか、思わず僕のほっぺにキスをした。
昼間っからなかなか大胆な女性である。しかしこれ、男としては最高のご褒美だろう。

 

僕は意外と いろんなことを覚えてて
戻れないこと よくわかってたって
何処かに面影を探してしまう

東京タワーでのキスは僕の回想だった。彼女とはおそらく別れたばかりだろう。
こういう印象的なシーン以外にも、僕は君との思い出をたくさん覚えているという。
「面影を探す」=「僕の記憶の中から君の姿を見つける」=「君を思い出す」。
もう恋人には戻れないのはわかっているけど、頭に多く残る思い出の記憶の中で君を見つけてしまうんだ。

 

自分に聴かせるだけの口笛は
少しだけ寂しくて胸締め付けるメロディ

 ひとりで歩きながら口笛を吹く僕。
前は君が横にいて聴いてくれていたけど、いまはひとり(SINGLES)。
僕はその口笛の音色の寂しさに胸が締め付けられているんだ。

 

悲しいのは今だけ
何度もそう言い聞かせ
いつもと同じ感じの
日常を過ごしている
それぞれが思う幸せ
僕が僕であるため
oh I have to go
oh I have to go

人は大切な人を失うと、自分の身体の半分が消えてしまったような喪失感に苛まれる。僕もその感情から何とか逃がれようと「悲しいのは今だけだから」と自分に言い聞かせ、いつも通りの日常を過ごす日々。
自分が自分でなくなってしまわないよう、新しい幸せを追い求めよう。
いつまでも彼女のと想い出に留まっていてはいけない。
そう言い聞かせて生きている。

 

どんな音楽も
痛快と話題の映画も
君の笑顔には敵わないってわかった
ねぇ君はまだあの虹を覚えてる?

 僕は彼女を失ってからひとりでたくさんの音楽を聴き、痛快だと話題の映画も観たけど、君が見せた笑顔より好きなものはない。
あの日見た東京タワーに架かる虹、君はまだ覚えているかい?

 

誰かの為に生きるって誇りを
僕に教えてくれたのは
君だけと言い切っていい 

 「君のために生きたい」
そう思えたのは君だけだよ…

 

守るべきものの数だけ
人は弱くなるんなら
今の僕はあの日より
きっと強くなったろう
それぞれが思う幸せ
君が君であるため
oh you’ll have to go 

 「守るべきものの数だけ人は弱くなれる」
そんな言葉があるのなら、君を失った僕はきっと強くなったのだろう。
君も自分が思う幸せを追い求めてほしい。
でないと君じゃなくなってしまうから。

 

誰もが胸の中で
寂しさっていう名の歌を歌ってる
少し もの悲しくて
人恋しくなるメロディ

 「ひとりは寂しい」と口笛が僕の胸に響く。
そうこれこそが『SINGLES』のテーマだ。

 ミスチルはかつて『口笛』という曲を世に出したが、その曲で歌われていた口笛は温かく笑顔に満ちた音色だった。一転『SINGLES』で歌われる口笛は孤独で、冷たくて、寂しい。同じ言葉でも曲によって全く印象を変える桜井歌詞の真骨頂をここに見た。

 

楽しいのは今だけ
自分にそう言い聞かせ
少し冷めた感じで
生きる知恵もついたよ
それぞれが思う幸せ
僕が僕であるため
oh I have to go
oh I have to go
oh you’ll have to go
oh we’ll have to go

 胸を締め付けられるような寂しさを乗り越えようと、僕は歩きだす。
君との時間は常に楽しかったから、失った時の悲しみが大き過ぎた。
だからもう、これからは一歩引いて生きることにしたんだ。
「楽しいのは今だっけ」ってちょっと冷めた感じでね。
それが今考える僕らしい幸せなんだ。

それでいい。
僕も、君も、前へ進まなきゃいけないから。

 

途中から歌詞解釈というより歌詞”翻訳”となってしまった『SINGLES』。
二人がどんな理由で離れてしまったはわからないが、幸せだった時間が頭に思い描け、切なさを増す。
最後も「男に弱さ」「つよがり」をあくまで等身大の表現で示した、桜井和寿らしい歌詞だった。

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海にて、心は裸になりたがる  ~Mr.Children『重力と呼吸』全曲レビュー②~

『重力と呼吸』、2ndトラックは

「海にて、心は裸になりたがる」

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アルバムの全貌が明かされたとき、臆病風(管理人) が一番気になったのはこのタイトルだった。意味わかんねーっす、 って。


なんとなく、しっとりとした『つよがり』 風のバラードなのかなと想像していたが、意外や意外、『 FIGHT CLUB』を髣髴とさせる失踪感たっぷりのサウンドが心地良い曲だ。

 

 

ぼんやりただぼんやりと

海へと向かい心は走る

昨日あった嫌なことを

洗い流してきたい

何があったのだろうか。

海へ行きたくなるほど嫌なことがあったらしい。

 

重箱の隅をつつく人

その揚げ足をとろうとしてる人

画面の表層に軽く触れて

似たような毒を吐く

 

ネットで誹謗中傷を垂れ流すことだろう。

スマホの画面をタッチするだけで次から次へと吐かれる毒。


そこに愛情があるわけでもなく、独創性があるわけでもない。

そんなツマンナイことをついつい自分も…

それが嫌で嫌で許せない僕は、海を訪れた。

 

沈みかけたオレンジ色の太陽を背にして

僕の影が砂浜で踊ってる

沈みかけの太陽を背にしているということは、人は東向きだ。

そして影が砂浜に伸びているということは、 海岸は東側にあるんだ!

んなことどうでもいいけど・・・

”砂浜で踊ってる” というのは「自分の影が波に映って揺れている」のを描写した桜井さんらしい表現。

またここは踊っているのが「僕」でなく「僕の影」なのが重要で、 つまり表には出せないけど、本音では心踊っている( たぶん怒っている)心境を歌っているのだと思う。

 

全部把握したつもりでいても

実は何も分かっていやしないよ

今心は裸になりたがっているよ

消極的なあなたにも

上から目線のあなたにも

ほら世界は確かに繋がっているよ

心が裸になりたがる、イコール本音をさらけ出したい。

前述のBメロで触れた「僕の影が踊ってる」状態から僕自身が踊れ るようになりたい!

コレこそがこの曲のテーマ。

自分のことなど誰もわかっちゃいない。

消極的でも上から目線でも構わないから海を見てごらん。世界はつながっているだろ?

 

生臭い海の匂いは

ロマンチックとは程遠いけど

デスクにいるより居心地が

良くてハイになる

海に来てよかったー!ってこと。

 

冷静に自分を客観的にみる回路を外して

君の影も今僕と踊ってる

冷静で客観的な視点を持ついつもの僕。

その回路を外し、本能をさらけ出した僕。

ここで二つの「僕」が登場する。


この「自分ともうひとりの僕が葛藤する」表現はミスチルのいろんな曲で使われていて、 その巧みさにいつも唸らされる。

 

そしてどっちの僕も同じようにさらけ出したいんだ!と叫ぶ僕。

 

対照的と思っていても

実はあちこちが似ているよ

今心は裸になりたがっているよ

本音と建前、対照的だと思っていたけど、 実は結構似ているということを僕はここで知る。

 

わがまま過ぎるあなたにも

自惚れが強いあなたにも

きっと世界はあなたに会いたがっているよ

嫌なやつだと考えていても

実はちょっぴり気になっているよ

今心は裸になりたがっているよ

 

わがままで自惚れ屋だってそれが本音ならいいじゃないか。

「あいつ嫌だな」なんて思ってても、実は気になってるんだろ? それでいい。

 

可愛げのないあなたにも

注目されたいあなたにも

きっと世界はあなたに会いたがっているよ

今心は裸になりたがっているよ

自分が嫌で嫌でしょうがなくなるときがあるけど、


海は僕に「本当の自分をさらけ出せばいいさ」と答えてくれた。

世界が会いたい「あなた」とは、つまり本音の「僕」のこと。

世界のどこかで誰かがきっと本当の自分を受け入れてくれるよ。

 


この曲はアップテンポなメロディの中に、 優しいメッセージが込められている、そんな歌詞だ。

 

<エソラことば>

海を訪れるとその壮大さに、 自分の悩みなんて本当にちっぽけに感じる。

そして否応なく世界を意識してしまう。

確かに世界は、海でつながっている・・・

Your Song  ~Mr.Children『重力と呼吸』全曲レビュー①~

2018年10月3日にリリースされた

Mr.Childrenニューアルバム『重力と呼吸』。

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前作『REFLECTION』から3年4ヶ月、彼らが叫びたかったのは何なのか?

全曲の歌詞を1ファンのシロート目線で読み解き考えるエントリー。

まずは1stトラック『Your Song』から検証スタート!

 

 花吹雪が舞うような

きらめく夏の日差しのような

時は過ぎ

華やいでた想い出も

少しだけ落ち着きを取り戻した

 

10月リリースだけあって、秋を感じさせるセンテンスから曲が始まる。

花吹雪が舞う春、華やかい色づいた夏を経て、季節はしっとりとした秋へ。

ここは意訳すると「キラキラした時期を過ぎて今は穏やかな気持ちで過ごしている」という風に取れる。

男女でいうと、付き合いはじめとか新婚生活のキラキラした感じが一旦落ち着いた頃、そんなイメージかな。

 

君と僕が重ねてきた

歩んできた たくさんの日々は

今となれば

この命よりも

失い難い宝物

 

 二人は出逢ってから今日まで、多くの想い出を共有して生きている。その記憶は何よりも大切な宝物だ。

僕も妻と昔付き合っていたころの想い出、例えば旅行のエピソードや一緒に食べたものついて何気なく話す時間はとても楽しい。僕はそんな時はいつも「想い出の積み重ねが僕らを生かしてくれているんだなぁ」としみじみ感じてしまうのだ。例えそれが、ありきたりでなんてこと無いことであったとしても。

 

ふとした瞬間に同じことを考えてたりして

また時には同じ歌を口ずさんだりして

そんな偶然が今日の僕には何よりも大きな意味を持ってる

そう君じゃなきゃ

君じゃなきゃ 

 

”小さな奇跡の喜び”を歌うサビ。

僕みたいな単純な奴は特にそうだけど、お笑い番組を観ていて笑うところが同じとか、あくびが伝染するとか、人は小さなことで簡単に「この人は運命の人かも」と勘違いしてしまうものだ(僕だけかもしれないけど)。

日常の何気ないことに運命すら感じさせてしまう君の存在の大きさ。そんな君との時間はすべてが宝物なのだろう。

 

 

苦手意識を持ってた

食べ物もスポーツも堅苦しい場所も

君が薦めるんなら無理なんかせず受け入れることが出来たんだ

 

「歩んできたたくさんの日々」が語られる2番のAメロ。

嫌いな食べ物を彼女に言われて食べてみたら意外にイケた。

何年も続けているスポーツ、はじめたキッカケは彼女の「やってみたら」の一言だった。

ひとりでは決して行かなかった美術館だが、彼女と行って以来ハマった。

誰しもこれに近い経験を持っていると思う。

 

時に僕が窮屈そうに囚われている考えごとに

なんてことのない一言で この心を自由にしてしまう

僕の悩みなんてほとんどが他愛のないことなんだろう。君はなぜか僕の背中を押してくれる。それも君が起こす奇跡なのだろう。

 

飛び込んでくる嫌なニュースに心痛めて

また時にはちっちゃな事で笑い転げて

一緒に生きていく日々のエピソードが特別に大きな意味を持ってる

そう君じゃなきゃ

君じゃなきゃ

2番の歌詞ではサビも含め、君と僕のエピソードがいくつか綴られていたが、どれもが日常の何気ないワンシーンなのが印象的だ。

僕を喜ばせ、楽にしてくれる君の何気ない小さな奇跡が僕の人生は大きな意味を持っている。

この曲を通してMr.Childrenが伝えたいことはこれだと思う。

 

ふとした瞬間に同じことを考えてたりして

また時には同じ歌を口ずさんだりして

そんな偶然が今日の僕には何よりも大きな意味を持ってる

そう君じゃなきゃ

君じゃなきゃ 

 

そう君じゃなきゃ

君じゃなきゃ

 

大サビの歌詞は1番と同じ。

繰り返しになるが、本当に大切なことは君が何気なく起こしてくれる小さな奇跡。こういうところに目が向けられると、パートナーに対する思いも変わってくるだろう。

一緒にいればいつもいいことばっかあるわけじゃない。喧嘩もするし、誰よりも憎くなる時もあるかもしれない。でも、2人で積み重ねてきたものは決して消えはしない。それらは例え他愛もないありきたりなものだったとしても、2人にとっては命より大事な宝物なのだ。

そんな風に思えたら、ちょっぴり優しい気持ちになれるでしょ。

 

以上が『Your Song』の歌詞解読である。

記念すべきニューアルバム1曲目は、聴きながら優しい気持ちになれる、登場人物の「君と僕」のことを素直に応援したくなる、そんな曲だ。

アルバム歌詞解説、この先の検証が楽しみで仕方ない。

 

〈エソラことば〉

タイトルの『Your Song』の意味は、

「君のことを歌った歌を、君への感謝を込め、君に贈る」

んな感じかな…

 

 

『重力と呼吸』で彼らは何を叫んだのか? ーMr.Childrenニューアルバム全曲解剖ー (プロローグ)

 

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平成30年10月3日ー

おそらく平成最後の作品となるであろう、Mr.Childrenのニューアルバム『重力と呼吸』がリリースされた。

前作『REFRECTION』が全方位型「老若男女いらっしゃい!」のファミレスアルバムなら、本作はロックンロール一直線、シェフのこだわり一品アルバムだ。

しかも収録曲はわずか10曲でシングル曲『ヒカリノアトリエ』が未収録。現在では定番ともいえるMV収録のDVDのような特典もない。セールスよりもこだわりと完成度を重視して勝負。そんなメンバーの想いが容易に想像できる。

 

「『重力と呼吸』はミスチル最高傑作のアルバムだ」
といった評価のしかたはあまり好きではない。

僕たちは新しい音楽に触れた時、脳ではなく本能というか、身体のずっと奥の部分でそれを吸収しているように思える。温かいスープを飲んだ時、実際は口と食道と胃にしか入っていないのに身体全体に染み入ってホッとする、あの感じだ。

僕は音楽シロートだから技術的なことや専門的なことはわからない。だから音楽を聴いた感想はその時に自分の身体に染み込んできた感覚に委ねるしかない。そこにメンバーの想いとか傑作かどうかとかは実は関係ないのだ。

だって、おしゃれなイタ飯屋のパスタよりファミレスのパスタが美味く感じる時って、正直あるじゃん。

要は「好き」か「嫌いか」だ。メンバーは毎作を「最高傑作」としてアルバムを作り、世に出してくれるのだから、聴く側の僕は自分に正直に、好きかそうでないかを感じたい。

 

前置きが長くなったが、結論を言おう。

『重力と呼吸』は大好きなアルバムだ。

 

想像するに、ミスチルの曲を好む人って、ファミレスのパスタが好きな人が多いんだと思う(これは例えです)。本作のようなイタ飯屋のパスタアルバムがファンに受け入れらるか、メンバーには未知数だったはず。

僕も最初に聴いた時、なんだか裏切られたような気分がしたのは確かだ。でもその裏切られ方がたまらない。僕がずっと好きで、ずっと追いかけてきたMr.childrenはいまだに変化と進化を絶えず、僕たちを裏切り続ける。だから僕はミスチルを聴き続けるんだろう。

 

そんな僕の本能をビリビリと刺激した『重力と呼吸』。本作で彼らは何を叫んだのだろうか。次回エントリーからの全曲レビューでその答えを探したい。

 

<収録曲>
01. Your Song
02. 海にて、心は裸になりたがる
03. SINGLES
04. here comes my love
05. 箱庭
06. addiction
07. day by day(愛犬クルの物語)
08. 秋がくれた切符
09. himawari
10. 皮膚呼吸

 

『Atomic Heart』後編 ~90年代「ミスチル現象」とは何だったのか?~その④

自宅の押し入れの奥の奥から、古い雑誌を引っ張り出してきた。
月刊カドカワ』1994年10月号。
表紙・特集Mr.Children -はりさけそうなメロディ-

 

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非常に濃い内容で、桜井さんのインタビュー、エッセイにアルバム全曲解説からJen・ナカケー・健ちゃんの鼎談まである。
なんと全50ページ、現在では到底ありえない贅沢さ。まさに”総力特集”である。
この時、Mr.Childrenと『Atomic Heart』は間違いなく日本音楽界のてっぺんに立っていた。


『Atomic Heart』といえば、なんといってもラストの曲『Over』が印象的だ。


「『Over』にヤられちゃった男が全国で急増中。」
TVでそんなニュースが流れてきそうなほど、僕の周りの野郎どもはこの曲に嵌っていた。

大学生なんてコンパとフラれるのが仕事みたいなもんさ。
そんな風に強がっていた僕たちモテない男一同「この歌詞、わかる~!」ってlawer the溜飲。
以降、僕らは『Over』をカラオケで歌いまくり、顔の割に胸の小さな女性を探しまくり、フラれたときは「君、風邪なんだね。そうだね、伝染するといけないよね」と無理やり納得しまくっていた。愚かな僕らは『Over』を聴くことで、悲しみのトンネルを潜り抜ける術を知った。
『Over』は、世のモテない男たちの心を救ったのだ。

でも、この曲の歌詞で僕が一番印象に残っているのは意外にもCメロ。
≪夕焼けに舞う雲 あんな風になれたらいいな いつも考えすぎて失敗してきたから≫
この部分だ。

終始具体的な失恋エピソードが歌われるる中で、ココだけ抽象的な表現なのがすごく印象的で好きだった。
思えば、あの頃の僕も、フラれた理由ばかり考えて余計に落ち込んだりしてたっけな。
僕は『Over』を聴いてから、何も考えずに空を眺めていれば、ほんの少し元気になれるって知ったような気がする。

いまではどの失恋もいい思い出となっている。